色覚異常とは

  • 野原 尚美
    視機能療法専攻

色覚異常とは

少し前に、主人公が色覚異常であるドラマが話題となりましたが、皆さんはこの色覚異常をご存知でしょうか。

全ての色は、光の三原色といわれる赤、緑、青の3つの光の組み合わせで作られます。この色を感じとるのは網膜に存在する視細胞です。視細胞は2種類ありますが、色を見分けるのは錐体細胞です。この錐体細胞は、赤の光によく反応する赤錐体(L-錐体)、緑の光に良く反応する緑錐体(M-錐体)、青の光に良く反応する青錐体(S-錐体)の3種類があります。色覚異常はこの3種類の錐体細胞の異常が原因で、色の認識や違いの識別が正常の人とは異なります。色の違いが分かりにくかったり、違う色でも同じ色に見えたりすることが代表的な症状です。

赤錐体に異常があると1型色覚、緑錐体に異常があると2型色覚といわれます。
色覚異常は主に遺伝によるもので、男性で5%(20人に1人)、女性で0.2%(500人に1人)の割合で現れます。このような先天色覚異常は、次の色の識別に困難を生じます。

    1. 赤と緑
    2. オレンジと黄緑
    3. 緑と茶
    4. 青と紫
    5. ピンクと白・灰色
    6. 緑と灰色・黒
    7. 赤と黒
    8. ピンクと水色
  • *1型色覚では1~8のすべてが、2型色覚では1~6が該当します。
  • 例えば、日常でこのようなことを感じたことがありませんか。

    • 熟れたトマトとまだ緑のトマトの区別がしにくい
    • 肉の焼け具合が分かりにくい
    • 緑の葉の中の赤い実が見つけにくい
    • 緑の木々の中の紅葉が分かりにくい
    • 桜の花はピンクでなく白だと思っていた
    • 花火の色が分かりにくい
    • 信号やブレーキランプの赤が分かりにくい
    • 色で区別されているコードの接続に苦労する
    • 鉄道路線図、複雑な地下鉄路線図の色分けが見にくい
    • カレンダーで日祝日(赤字)を見落とす など
  • 学校ではこのようなことを感じたことはありませんか。

    • 黒板の赤いチョークの文字が分かりにくい
    • 社会科の地図が見にくい
    • 色の話が他の人とかみ合わないことがある
    • 描いた絵の色遣いがおかしいと言われた
    • 絵具を混ぜると色が分からなくなる
    • 赤のレーザーポインターは分かりにくい など

色覚異常があっても色が見えないわけではなく、程度にもよりますが、弱度では日常生活にもほとんど困りません。しかし通常とは色の見え方の仕組みが異なっているため、色の組み合わせによっては見分けにくい場合があります。

過去には小学校で全員を対象に色覚検査が行われていましたが、2003年(平成14年)3月29日に学校保健法を改正し、検査の施行義務がなくなりました。希望者のみ受ければよいことになったのですが、実際には多くの学校でほとんど検査が行われなくなりました。その結果、児童、生徒が自身の色覚の特性を知らないまま卒業を迎え、就職にあたって初めて色覚による就業規制に直面するなどのトラブルが多くみられるようになりました。これを受け2015年(平成26年)4月30日に色覚健診に関して、①学校医による健康相談において、児童生徒や保護者の事前の同意を得て個別に検査、指導を行うなど、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えること、②教職員が,色覚異常に関する正確な知識を持ち、学習指導、生徒指導、進路指導等において、色覚異常について配慮を行うとともに、適切な指導を行うよう取り計らうこと等を推進すること。特に、児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま不利益を受けることのないよう、保健調査に色覚に関する項目を新たに追加するなど、より積極的に保護者等への周知を図る必要があると指導強化の内容が示されました。

学校保健安全法施行規則施行通知 文部科学省より

  • 大切なことは、自分の間違えやすい色など状態を理解することだといえます。
    自身の色覚を知ることは、日常生活ではどのようなことに注意が必要かを知ることにつながります。また、学校などで配慮して欲しい事などを伝えることで、より学校生活が過ごしやすくなります。さらには、進学や就職を考える上で、特に色覚異常があると制限される資格、職種を目指す場合に、取得可能かどうかを早めに確認することもできます。
    色について心配な方や、自身の色覚はどうであるのかを知っておくためにも、なるべく早めに眼科を受診して検査を受けることをお勧めします。

参考資料
1)日本眼科医会:色覚異常といわれたら | 目についての健康情報 : (gankaikai.or.jp)
2)栗田正樹:色弱の子を持つすべての人へ 20人にひとりの遺伝子:北海道新聞社 2008年 
3)神奈川県医師会:色覚異常について:shikikakuijounitsuite201901.pdf (kanagawa-med.or.jp)

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