研究活動研究者インタビュー:眞田 正世

  • 眞田 正世Masayo Sanada
    看護学科

現在取り組まれている研究テーマについて詳しく教えて下さい。どんな研究をされているのですか?
現在取り組んでいる研究は、「食事とうつ病・自殺との関連について」です。
自殺は、日本の死因順位20~39歳までの第1位、40~49歳までの第2位です。日本は、若い人たちの自殺が大変に多い国です。
自殺は、うつ病、アルコール依存症、人間関係の葛藤、経済的問題、痛み、紛争、災害、喪失、差別等が複雑に絡み合った結果生じると言われています。
世界保健機関(WHO)では、「自殺防止;世界の優先課題」として、自殺防止戦略を世界に向けて推奨しています。その結果、自殺は世界的に減少傾向となりましたが、現在においても日本の若者の死因順位の1位です。
うつ病予防や自殺防止は、国や地域、各事業所、学校等の社会的な取り組みが最も重要な対策です。しかし、国民のひとり一人が取り組める対策としては難しい面もあります。
そこで、うつ病予防や自殺防止の一環として、食事によるアプローチを考えました。
近年、食事とうつ病や自殺との関連について様々な報告がされています。しかし、これらの報告は短期的で地域や対象を限定した場合が多く、否定的な報告もあります。そこで、食事とうつ病及び自殺との関連を長期的な国際比較研究で明確にし、栄養バランスの取れた健康的な食事がうつ病や自殺を予防する可能性を明らかにしたいと考え、研究を行ってきました。
研究の結果、うつ病予防や自殺防止の食事としては、野菜類や果実類、魚などを中心とした、多くの種類の食材を用いる多様性の高い食事が望ましいと考えられます。このような食事は、身体面だけでなく、心理精神面にも影響を及ぼし、うつ病予防や自殺防止の一端を担う可能性があると考えられます。
しかし、これらの食事が高価で手に入りにくいものだと望ましい食事とは言えず、意味がありません。日本の伝統的な食事パターンとしての和食は、比較的安価で日本では手に入り易いものも多くあります。今後の課題として、安価で手に入りやすい食材によるバランスの良い食品と食事パターンについて更に検討したいと考えています。
研究に取り組むきっかけは何ですか。教えて下さい。
WHOでは自殺防止戦略を4つ推奨しており、そのうちの一つが「若者が人生の重圧に対応できるスキルを身につけるよう支援をする。」としています。私の身辺でも、若者のうつ病や自殺が起きています。
人々の健康に携わる看護において、一瞬で命を奪う自殺やその危険因子のうつ病は深刻な問題です。この問題を少しでも回避できないものかと思い、個々での取り組みがしやすく、近年注目されている食事におけるアプローチを考えました。
研究をして良かったこと思うことはどんなことですか?
看護教育を行っている私は、この研究結果に基づき、食事の重要性を直接学生に伝えることができます。学生が看護師となった時に、食事が身体だけでなく心と密接な関連があることを看護の対象である人々に伝えられることは、人々の健康の保持増進を目的とする看護にとって重要です。
食事は人の身体と心を作る重要なものですが、子供にとっては更に重要です。将来、学生が親となった時、身体だけでなくこころの成長にも重要な食育を認識し、子育てができる可能性があります。
先生のような研究者になるにはどのような進路を選択すると良いでしょうか。
大学院の修士課程で研究を実践し、研究について学ぶことです。大学院の修士課程は、働きながら学ぶことができる方法も様々あります。大学院の入学条件は、大学はもちろんのこと、当校のような短期大学や看護専門学校を卒業していれば入学できる大学院も多いと思います。臨床で数年間の勤務経験を経て、新たなことに挑戦をしてみようとする方や日頃より様々な疑問を持っておられる方は、是非取り組まれてはいかがでしょうか。
これから研究者を目指す方へのメッセージをお願いします。
世界は日進月歩で進化をしています。従来では正しいとされていた事でも、今では否定されている事やその逆もあります。また、今の状況に応じた新しい発見もあります。
研究者を目指す方は、日々いろいろな疑問を持ちながら、疑問に真摯に向き合い、それを調べてみる姿勢が必要だと思います。調べて答えの見つかることも多いと思いますが、見つからないこともあるかもしれません。それは研究につながります。様々な疑問に対して、まずは自ら深く調べることが研究者としての第一歩かと思います。

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