研究活動研究者インタビュー:小林 美奈子

  • VOL03小林 美奈子Minako Kobayashi
    看護学科

現在取り組まれている研究テーマについて詳しく教えて下さい。
どんな研究をされているのですか?
ここ数年は地域で活動的に生活している元気高齢者を対象に、心身ともにより生き生きと生活できるための心理的な要因を探求し、それを看護実践に取り入れて検証してきました。まず、ターゲットとなる自治体の高齢者にアンケート調査を実施し、統計的分析を基に心身の健康に影響する要因を絞り出し、その要因を取り入れた健康増進プログラムを開発し、実践の効果の検証をしてきました。最近の実践例では、高齢者は子どもとの触れ合いが幸福感やQOLに影響があるのではないかと、仮説をたて保育園や学童クラブで、地域住民の意見から歴史や回想法を取り入れた世代間交流を企画し効果の検証をしました。また直近の2017年から2019年はスピリチュアリティを取り入れた心身健康増進プログラムを開発し、三重県や岐阜県内の自治体の介護予防事業等で延べ500名ほどの高齢者を対象に実践研究をさせていただき、地域の絆や健康に関するQOLへの好効果を確認することができました。
研究に取り組むきっかけは何ですか。教えて下さい。
まず、一番のきっかけは私と同じ看護師で何事にも一番の理解者であった義母が晩年に抑うつとなり、家に閉じこもり、次第に身体が衰弱し転倒骨折がきっかけで、あっという間に亡くなり早く予防ができなかったことを悔んだことです。そこで、元気なうちに高齢者の心身の健康を高める要因を探求するため博士課程に進学し専門的に研究することにしました。大学院では欧米の研究論文の講読会や文化人類学や医学、心理学の指導教員とのディスカッションを通し、高齢者の心身の健康増進の要因には個人の心の奥深くにある宗教とは別とする信念や価値観が要因にあり、その一つにスピリチュアリティという現実の現象を超越した感覚や感情があることが仮説として浮かびました。欧米では、スピリチュアリティと健康への効果は実証されており、それを日本の高齢者でも検証してみたいと思いました。また、社会情勢として日本では毎年、約1万人以上高齢者が自殺しています。高齢者の自殺の理由としては、心身の健康の悪化が挙げられ、高齢者は、自分の生は周囲に迷惑をかけると思いこみ、生きる意味を無くし、うつになり易いことです。そこで、スピリチュアリティを健康増進のケアに取り入れることは高齢者のうつ予防にも応用できるとも考え、予備的調査を実施しました。
研究をして良かったこと思うことはどんなことですか?
一番には物事をよりポジティブに捉えられるようになったことです。私の実践してきたスピリチュアルケアとは大いなるものへの感謝や自然との一体感への気づきや心の拠り所について、住民同士で共有する機会を意図的に取り入れ、心身の健康増進を図るものです。そのせいか教室の窓から見える無名の山にもホッとし、景色の移り変わりや野の花にも美しさを感じようになりました。実際に学生に「この山々の景色は旅行に行ったように素敵ですね」と言ったらびっくりした顔をしていました。近隣でも気持ち良いと感じられる眺めや場所は自分にとってはパワースポットであり、安上がりな楽しみが増えました。私の研究はほぼ単独か協力者が1名で小規模サイズの研究ではありますが、研究を通して様々な地域に出向き住民や行政の方と密接に関わることになり、そこで研究で協力をいただいた人との出会いが財産となりました。さらに、看護をする際に患者さんの育った地域の祭祀や文化的背景を看護者として知ろうとすることは、その方を大切に慈しむことであると心から思えるようになりました。
先生のような研究者になるにはどのような進路を選択すると良いでしょうか。
本学のような短期大学を卒業した後、看護大学の大学院修士課程に進学し研究手法を学ぶことができます。通常の修業年限は2年ですが、看護師として仕事と両立しながら学業や研究にじっくりと取り組みたい社会人に配慮した長期履修制度を活用した場合、3年または4年かけて学ぶことができます。
これから研究者を目指す方へのメッセージをお願いします。
大学院へ入学するには研究したいテーマを明確にし、文章でまとめる能力が必要となります。看護は実践の科学と言われよう、日々の看護ケア実践から疑問や解決したい課題が見つかることが多くあり、普段から書き留めることや文献を読むことをお薦めします。現在、研究テーマが見当たらなくても、患者さんを全人的に捉え真摯に向き合うことで、患者さんの心身の苦悩やケアの在り方から研究の課題が見えてくることがあります。

研究紹介に関するWebサイト

  1. 高齢者の心身健康増進スピリチュアルケアプログラムの開発と検証 文部科学省: 科学研究費助成事業
  2. 小林美奈子 – 研究者 – researchmap